基本情報
起始 | 後頭骨上項線、外後頭隆起、項靭帯① |
停止 | 鎖骨外側1/3後縁① |
支配神経 | 副神経・頸神経① |
髄節レベル | C2~C4① |
作用 | 頭頚部同側側屈・同側回旋、頸部屈曲、肩甲骨上方回旋・内転・挙上① |
関連情報
・僧帽筋上部線維は鎖骨外側1/3を介して、三角筋前部線維と互いに引き合う関係となる。②
・肩関節90°外転位とした肢位では、僧帽筋中部線維は肩峰、肩甲棘を介して、三角筋中部線維および後部線維と互いに引き合う関係となる。 ②
・肩関節をゼロポジションとした肢位では、僧帽筋下部線維は肩甲骨を介して三角筋前部線維、中部線維、後部線維と互いに引き合う関係となる。 ②
・僧帽筋上部線維:鎖骨肩峰端の挙上とともに肩甲骨を挙上し、同時に肩甲骨の上方回旋に作用する。
僧帽筋中部線維:肩甲骨の内転とともに肩甲骨の上方回旋に作用する。
僧帽筋下部線維:肩甲骨の下制とともに肩甲骨の上方回旋に作用する。 ②
・上肢挙上に伴う肩甲骨の上方回旋は、僧帽筋の3つの線維群と前鋸筋による共同運動による。 ②
・腹神経麻痺が生じると、僧帽筋による肩甲骨の安定化が失われ、翼状肩甲を呈する。長胸神経麻痺に伴う前鋸筋不全でも、肩関節外転時に著明となり、長胸神経麻痺による翼状肩甲骨は、肩関節屈曲時に著明となる。 ②
・胸郭出口症候群牽引型のケースでは、僧帽筋中部線維、下部線維の筋力低下を認める場合が多い。 ②
・投球障害肩のなかには、僧帽筋の筋力低下を主体とした肩甲胸郭関節機能の低下を基盤としたインピンジメント症候群や、腋窩神経障害なども存在するので注意が必要である。 ②
・関連疾患:腹神経麻痺、胸郭出口症候群、投球障害肩、肩関節不安定症など。 ②
・筋活動に関しては、Coolsらが反応時間という観点から研究を行った。上肢に対する急激な外乱に対して、インピンジメント群では僧帽筋中部、後部の反応時間に遅延がみられた。その影響から、肩甲骨固定に対する僧帽筋上部の貢献が増加すると考察した。③④
・上肢挙上運動中に主動作筋として作用する僧帽筋(上部・中部・下部線維)、前鋸筋の筋活動、筋力低下は、肩甲骨運動以上の原因となる。⑥⑦⑧
・正常な上肢挙上運動では、僧帽筋上部、下部線維、前鋸筋下部線維が協調して活動することにより、肩甲骨上方回旋、後傾が生じる。したがって、これらの筋群のいずれかに筋活動、筋力低下が生じると、肩甲骨上方回旋、後傾が減少すると考えられている。なお、僧帽筋上部線維は肩甲骨に付着しておらず、鎖骨挙上を介して肩甲骨上回旋に関与する。⑤
・僧帽筋上部線維の筋力を改善させるためには、端坐位での肩甲骨挙上運動が効果的である。これは「shrug-exercise」と呼ばれている。⑤ しかし、この運動は、僧帽筋上部線維だけでなく、肩甲挙筋や菱形筋群の活動も高まるため、僧帽筋上部線維をより選択的に強化したい場合は上肢最大挙上位で肩甲骨挙上を行う。⑨
・肩関節の運動は、その運動に参画する筋群の共同作用によって成り立っている。なかでも、上肢挙上の主動作筋である三角筋は、挙上初期より活動を開始し90°~120°でその活動は最大となる。腱板構成筋もまた挙上初期より活動を開始するが、挙上中期までにその活動は最大となり、それ以降は減少してゆく。⑩⑪ 興味深いことに、棘上筋の活動開始は、挙上(骨運動)が開始されるよりもわずかに(約0.1秒)早いことから、挙上運動のStaeterとして上腕骨頭の引き寄せに作用すると考えられる。肩甲骨の運動や支持に関与する僧帽筋、前鋸筋、および菱形筋の活動も、挙上初期より開始され、挙上100~130°で最大となる。⑪
引用文献
①⑴林典雄 監修,鵜飼建志 編著:セラピストのための機能解剖学的ストレッチング 上肢 第1版,2016
②林典雄 執筆:改訂第1版 運動療法のための機能解剖学的触診技術‐上肢,2012
③福林徹 蒲田和芳 監修:肩のリハビリテーションの科学的基礎,第1版,2016
④coolsam,wirvrouw ee,de crercq ga,danneels la,willemstm,cambier dc,voightml,scapularmuscle recruitment pattern:electromyographic response of the trapezius muscle to sudden shoulder movement before and after a ratiguing exercise.j orthop sports phys ther.2002;32:221-9.
⑤編集 甲斐義浩:肩関節理学療法マネジメント 機能障害の原因を探るための臨床思考を紐解く,2021
⑥kibler wb.et al:clinical inplicationsof scapular dyslinesis in shoulder injury:the 2013 consensus statementfrom the ‘C summit’ brj sports med.47(14):877-885.2013
⑦udewing pm.et al:the association of scapular kinematics and glenohumeral joint pathologies j orthop sports phys ther.39(2) 90-104.2009
⑧cools am.et al:rehabilitation of scapular dykinesis:from the office worker to the elite overhead athlarte br j sports med.48(80692-697.2014)
⑨castelein b.et al:madefying the shoulder joint position during shrugging and retraction exercises alters the activation of the mediak scapular muscles.man ther.21.250-255.2016
⑩kironberg m.et al:muscle activity and coordination in the normal shoulder.an ekectoromyographic study clin orthop relat res.(257)76-85.1990
⑪wickham j.et al:quantifying ‘normal’ shoulder muscle activity during abduction j ekectromyogr kinesiol.20(2)212-222.2010
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