基本情報
起始 | 第1~第9肋骨側面 上角部:第1・2 中央部:第2・3 下角部:第4~第9肋骨① |
停止 | 肩甲骨肋骨面の内側炎の全長① |
支配神経 | 長胸神経① |
髄節レベル | C5~C7① |
作用 | 上角部:肩甲骨外転・下方回旋 中央部:肩甲骨外転 下角:肩甲骨外転・上方回旋① |
関連情報
・第1肋骨と第2肋骨に起始する線維の一部は、肩甲骨上角に停止する。②
・第2肋骨に起始する線維の一部と第3肋骨に起始する線維群は、下角までの内側縁に停止する。 ②
・第4肋骨から第9肋骨に起始する線維は、肩甲骨下角に集中して停止する。 ②
・前鋸筋は肩甲骨外転に関わる唯一の筋肉である。 ②
・上角に付着する線維群は外転とともに下方回旋に関与する。 ②
・上角以外に付着する線維群とともに上方回旋に関与する。 ②
・前鋸筋の機能を水平面上でみると、僧帽筋と協同して肩甲骨内側縁を胸郭に引き付け、安定化させる。 ②
・前鋸筋は僧帽筋と協同して、肩甲骨の上方回旋に作用する重要な筋肉である。 ②
・前鋸筋が臨床のなかで問題となるのは、長胸神経麻痺に伴う翼状肩甲骨が有名である。すべての肩関節運動の土台となる肩甲骨安定化の破綻は重篤な障害となる。 ②
長胸神経麻痺の際に前鋸筋機能を確認するときは、肩関節屈曲運動を用いたほうが間違いがない。外転運動では僧帽筋の代償により挙上が可能となる場合がある。 ②
・肩関節下垂位で後方から観察したとき、肩甲骨内側縁が胸郭から浮き上がった所見があるときは、前鋸筋の機能不全を疑う。 ②
・関連疾患:長胸神経麻痺、胸郭出口症候群、肩関節不安定症など。 ②
・投球障害などのいわゆるスポーツ障害を起因とする腱板損傷では、肩甲骨のアライメントの重要性が数多く唱えられてきた。Solem-Bertoftらは、肩甲骨理トラクションは肩峰下スペースを増加させると報告し、安静時の肩甲骨のアライメント修正の必要性を訴えた。④
また前鋸筋と僧帽筋下部のとの合力(force couple)は上肢挙上時の肩甲骨上方回旋や安定性には不可欠である。この合力の低下により肩峰下や烏口肩峰靭帯でのインピンジメントや肩甲上腕関節不安定症をまねき、腱板損傷の可能性が指摘された。このため最大下での前鋸筋と僧帽筋下部線維の安定化トレーニングは大切である。③⑤⑥
・上肢挙上運動中に主動作筋として作用する僧帽筋(上部・中部・下部線維)、前鋸筋の筋活動、筋力低下は、肩甲骨運動以上の原因となる。⑧⑨⑩
・正常な上肢挙上運動では、僧帽筋上部、下部線維、前鋸筋下部線維が協調して活動することにより、肩甲骨上方回旋、後傾が生じる。したがって、これらの筋群のいずれかに筋活動、筋力低下が生じると、肩甲骨上方回旋、後傾が減少すると考えられている。なお、僧帽筋上部線維は肩甲骨に付着しておらず、鎖骨挙上を介して肩甲骨上回旋に関与する。⑦
・前鋸筋下部線維の筋力改善を目的とした運動療法は数多く存在する。その中でも「push-up plus」は効果的な運動の一つであり、両側の手掌とつま先で支えた状態から肩甲骨を前方突出させることにより前鋸筋の活動を高めることができる。立位で行う場合には、肩甲骨前方突出に加えて上肢を挙上させることで肩甲骨上方回旋を促すことができる。⑪ またゴムバンドなどを使用して水平外転方向への等尺性収縮を加えた状態で行うと大胸筋の活動が抑制され、前鋸筋をより選択的に強化することができる。⑫
・肩関節の運動は、その運動に参画する筋群の共同作用によって成り立っている。なかでも、上肢挙上の主動作筋である三角筋は、挙上初期より活動を開始し90°~120°でその活動は最大となる。腱板構成筋もまた挙上初期より活動を開始するが、挙上中期までにその活動は最大となり、それ以降は減少してゆく。⑬⑭ 興味深いことに、棘上筋の活動開始は、挙上(骨運動)が開始されるよりもわずかに(約0.1秒)早いことから、挙上運動のStaeterとして上腕骨頭の引き寄せに作用すると考えられる。肩甲骨の運動や支持に関与する僧帽筋、前鋸筋、および菱形筋の活動も、挙上初期より開始され、挙上100~130°で最大となる。⑭
引用文献
①林典雄 監修,鵜飼建志 編著:セラピストのための機能解剖学的ストレッチング 上肢 第1版,2016
②林典雄 執筆:改訂第1版 運動療法のための機能解剖学的触診技術‐上肢,2012
③福林徹 蒲田和芳 監修:肩のリハビリテーションの科学的基礎,第1版,2016
④solem-bertoft e,thuomas ka,Westerberg ce,the influence of scapular retraction and protraction on the width of the subacromial space.an mri study.clin othop relat res.1993;296:99-103.
⑤mcmahon pj,jope fw,pink mn,Brault jp,perry j.comparative electoromyographic analysis of shoulder muscle during planar motions:anteriot glenohumeral instability versus normal.j shoulder elbow surg.1995;5(2 pt 1):118-23.
⑥ludewig pm,cook tm,alterations in shoulder kinematics and associated musucle activity in people with symptoms of shouldet impingement.thys ther.2000;80:276-91.
⑦編集 甲斐義浩:肩関節理学療法マネジメント 機能障害の原因を探るための臨床思考を紐解く,2021
⑧kibler wb.et al:clinical inplicationsof scapular dyslinesis in shoulder injury:the 2013 consensus statementfrom the ‘C summit’ brj sports med.47(14):877-885.2013
⑨ludewing pm.et al:the association of scapular kinematics and glenohumeral joint pathologies j orthop sports phys ther.39(2) 90-104.2009
⑩cools am.et al:rehabilitation of scapular dykinesis:from the office worker to the elite overhead athlarte br j sports med.48(8)692-697.2014
⑪編集 甲斐義浩:肩関節理学療法マネジメント 機能障害の原因を探るための臨床思考を紐解く,2021
⑫park km.et al:effect of isometric horizontal abduction on pectoralis major and serratus anaterior emg activity during three exercises in subjects with scapular winging j electromypgy kinesiol.23(2)462-468
⑬kironberg m.et al:muscle activity and coordination in the normal shoulder.an ekectoromyographic study clin orthop relat res.(257)76-85.1990
⑭wickham j.et al:quantifying ‘normal’ shoulder muscle activity during abduction j ekectromyogr kinesiol.20(2)212-222.2010
コメントを残す