母趾外転筋

基本情報

起始踵骨隆起内側、舟状骨粗面①
停止母趾中足骨頭下にある内側種子骨を介して母趾基節骨底①
支配神経内側足底神経①
髄節レベルL5・S1①
作用足部底屈・外転、母趾屈曲・外転①

関連情報

・母趾外転筋は、母趾MTP関節を屈曲し外転させる。②

・母趾外転筋は、母趾球の内側の膨らみを形成する筋肉である。②

・母趾外転筋、短母趾屈筋母趾内転筋は、母趾中足骨折の内転、回外を制動し、前足部横アーチを保持する。②

・前足部横アーチが低下し、フットプリント上第2・3中足骨頭部に圧の集積がみられる症例では、母趾外転筋をはじめとする母趾球筋群の筋力低下を認める。③④

・外反母趾の症例では、母趾球筋の筋力低下に伴う母趾中足骨の過内転が、外反母趾角の進展に関与している。②

・母趾球筋への筋力トレーニングは、足関節を底屈位で行うと長母趾屈筋の関与を排除でき効果的である。②

・関連疾患:外反母趾、開帳足、中足骨頭部痛、足底胼胝、偏平足障害など。②

・Fiolkowskiらは健常者を対象として脛骨神経ブロックを行い、その前後で母趾外転筋の筋電図計測およびnavicular drop testを実施した。脛骨神経ブロック後は母趾外転筋活動力は優位に低下し、舟状骨粗面の降下量が増大した。またHeadleeらは健常者を対象に足部内在筋の疲労を誘発するエクササイズを実施し、その前後で母趾外転筋の筋電図計測およびnavicular drop testを実施した。足部内在筋の疲労誘発後は母指外転筋の中間周波数が優位に減少し、舟状骨粗面の降下量が増大した。これらの研究により、母趾外転筋の活動抑制あるいは疲労誘発に伴い内側縦アーチ高が減少するという結果が得らえた。母趾外転筋のような足部内在筋が内側縦アーチ高の支持に貢献する可能性が示唆される。⑥⑦

・屍体足にて母趾外転筋に約19Nの張力を与えた際の、踵骨・第1中足骨のアライメント変化を調査した研究では、母趾外転筋の張力発生に伴い、踵骨1.4°背屈・1.2°内がえし・4.2°外転し、第1中足骨は1.3°底屈・1.4°内がえし・0.99°内転した。⑧ この結果から、母趾外転筋の内側縦アーチの支持に貢献すると考察された。⑨

・トラス機構の破綻などによる立方骨降下は、外側縦アーチの破綻につながるため、第5中足骨の外転を引き起こし、内反小趾に代表される足趾障害の原因となる。また、立方骨の過剰な降下が生じた場合は楔舟関節の不安定性が増大すると推測され、それによる第1リスフラン関節の過剰な底屈・外転を引き起こす可能性がある。⑨ この異常アライメントに伴う不均等な軸回旋が母趾外転筋と母趾内転筋の拮抗力を破綻させる。⑩ その結果、第1中足骨が内転・外がえしし、外反母趾の原因となりうる。⑨

・母趾外転筋は踵骨隆起内側突起・屈筋支帯・足底腱膜から起始し、内側種子骨を介して第1基節骨面に停止する。足部において、外側は短趾屈筋、表層は足底腱膜、深層は内・外側足底神経、後脛骨動脈と隣接する。⑪ この筋が収縮すると、第1趾のMTP関節は屈曲・外転する。また、足関節の肢位に影響されることなく、母趾の屈曲(DIP関節を除く)が可能である。内側縦アーチを挙上させる⑫ほか、母趾の蹴り出し時に動的支持機構としての機能を発揮する。⑬ 外反母趾の進行を抑止する筋としてよく知られている。

・母趾外転筋は、内側縦アーチの挙上や足底腱膜の緊張に関わり、荷重を吸収・分散する。⑪

引用文献

①林典雄 監修,鵜飼建志 編著:セラピストのための機能解剖学的ストレッチング 下肢・体幹 第1版,2019

②林典雄 執筆:改訂第1版 運動療法のための機能解剖学的触診技術‐下肢・体幹,2007

③林典雄,鵜飼建志,ほか:足底挿板が足部内在筋に及ぼす影響について.日本技師装具学会誌,16(4):287-290,2000

④林典雄,橋本貴幸,ほか:舟状骨パッドが足幅に及ぼす影響について.日本義肢装具学会誌,19(3):228-232,2003

⑤福林徹 蒲田和芳 監修:足部スポーツ障害治療の科学的基礎,2017

⑥fiolkowski p,brunt d,bishop m,woo r,horodyski m.intrinsic pedal musculaturesupport of the medial longitudinal arch:an erectromyography study.j foot ankle surg.2003;42:327-33

⑦headlee dl,leonarg jl,hartjm,ingersonll cd,hertel j.fatige of the plantar intrinsic foot muscles increases navicular drop.j erectomyogr kinesiol.2008;18:420-5.

⑧wong ys:influenceof the acductor halucis muscle on the medial arch of the foot:a kinematic and anatomical cadaver study.foot ankle int.28(5):617-620.2007.

⑨編集 小林匠 三木貴弘:足部・足関節理学療法マネジメント 機能障害の原因を探るための臨床思考を紐解く,2021

⑩伊藤浩充:足関節と足部の運動学.身体運動学(市橋則明 編).p274-329.メジカルビュー社.2017.

⑪著 赤羽根知良:痛みの理学療法シリーズ 足部・足関節痛のリハビリテーション,2020

⑫fiolkowski p,et al:intrinsic pedal musculature support of the medial longitudinal arch:an electromyography study.j foot ankle surg,42:327-333.2003.

⑬wpng ys:influence of the abductor hallucis muscle on the medial ardh of the foot:a kinematic and anatomical cadaner study.foot ankle int,28:617-620.2007.

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