小殿筋

基本情報

起始腸骨外面の前殿筋線の前方①
停止大転子の前面①
支配神経上殿神経①
髄節レベルL4~S1①
作用股関節外転・屈曲・内旋①

関連情報

・小殿筋は中殿筋により完全に覆われており、かつ果たす機能も中殿筋とほぼ同様であるため、両者を区別して触診することは難しい。 ②

・大腿骨を固定した状態(片脚立位の状態)では、中殿筋、小殿筋は骨盤を外下方へと引きつけ、骨盤を水平位に保つ。 ②

・小殿筋は股関節の外転以外に、屈曲と内旋作用を有している。 ②

・トレンデレンブルグ歩行との違いは、体感を患側へ傾けることで荷重線を大腿骨頭へと近づけ、股関節にかかる内転モーメントや圧縮力を減少させようとする反応であり、比較的骨盤の水平位は保たれている。 ②

・トレンデレンブルグ歩行の特徴は、歩行速度を速めると股関節を支持する時間が減少するため、左右の動揺性はむしろ減少するのが特徴である。 ②

・変形性股関節症、大腿骨頸部骨折、大腿骨転子部骨折、中殿筋麻痺、先天性股関節脱臼、大腿切断、デュシャンヌ型筋ジストロフィー症など。②

・変形性股関節症患者を対象に股関節外転筋の筋力強化を単関節運動と他関節運動で行い、その後、片脚立位の筋活動(大殿筋、中殿筋、大腿筋膜張筋)を比較すると、単関節運動群では筋活動量に変化を認めないが、多関節運動群では筋活動量が増大したことが報告されている。④ また別の剛体バネモデルを用いた研究では、健常者を対象に、片脚立位姿勢における外転筋の筋張力を推定したところ、中殿筋、大殿筋、小殿筋の筋張力発揮の比率は、それぞれ46%、32%、22%であったと報告されている。⑤ これは片脚立位保持は中殿筋単独の働きではなく外転筋群の筋出力のバランスが重要であること示している。これらの研究報告から、従来のエラスティックバンドを用いた単関節運動中心の筋力強化だけでなく、動作パフォーマンスを再獲得するには不十分であるといえる。③

・KumagaiらはMRIを使用して健常者を対象に片脚立位5分後の小殿筋、中殿筋の輝度変化を調べた結果、中殿筋よりも小殿筋の輝度が高くなったと報告している。⑥ さらに、ワイヤ電極を用いて健常者を対象に片脚立位時の股関節外転の筋活動を計測した結果、小殿筋が中殿筋や大腿筋膜張筋活動に比べ優位に高くなる結果を示した。⑦ これらのことより、股関節外転筋機能不全に対しては、小殿筋の働きも重要である。③

・小殿筋深層線維の一部は関節包上部に付着しており、収縮することで股関節外転時の関節包のエントラップメントを生じさせないように関節運動を誘導していると推察される。⑻ また小殿筋は片脚立位時には中殿筋よりも働くため支持機能を有していると考えられている。⑨ さらに小殿筋の作用をベクトルで考えると、外転作用以外に関節を圧縮する作用があると考えられる。⑩ 小殿筋は伸展外転位で低負荷運動を行うと選択的に働く。⑪

・小殿筋後部線維は股関節屈曲50°で、筋線維の走行と大腿骨の長軸が一直線となるため、外転トルクを発揮しやすいことがわかった。しがたって、小殿筋後部線維は立脚初期において、股関節の内転制御作用を有すると考える。③

引用文献

①林典雄 監修,鵜飼建志 編著:セラピストのための機能解剖学的ストレッチング 下肢・体幹 第1版,2019

②林典雄 執筆:改訂第1版 運動療法のための機能解剖学的触診技術‐下肢・体幹,2007

③編集 永井聡 対馬栄輝:股関節理学療法マネジメント 機能障害の原因を探るための臨床思考を紐解く,2021

④今田健.ほか:変形性股関節症における単関節.多関節運動重視したエクササイズが関節可動域 筋力 片脚立位及び歩行に与える影響.理学療法学.23⑷521-527.2008

⑤姫野信吉:剛体バネモデルによる股関節骨頭合力の推定について.関節の外科.18.1-6.1991

⑥kumagai m.at al:functional evauation of hip abductor muscles with use of magnetiv resonance imaging.j orthop res.15⑹:888-893.1997

⑦室伏祐介.ほか:ワイヤ電極による股関節外転筋の比較 外転20° 片脚立位 歩行において.Hip Joint.39(supple)235-237.2013

⑧walters j et al:gluteus minimus:observations on its insertion.j anat.198(pt2):239-242.2001

⑨熊谷優.ほか:MRIにおける股関節外転筋の機能評価 Hip joint.21:514-519.1995

⑩Gottschalk f et al:the functional anatomy of tensor fascia latae and gluteus medius and minimus.j anat.166:179-189.1989

⑪平尾利行.ほか:股関節深層筋トレーニングに関する検討:超音波診断装置を用いて.Hip Joint.35:62-65.2009

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