短橈側手根伸筋

基本情報

関連情報

・短橈側手根伸筋腱はリスター結節の橈側を通過する。 ②

・短橈側手根伸筋は起始部へ向かうにつれて、長橈側手根伸筋と総指伸筋の深部を走行し、外側上顆に付着する。 ②

・手関節の近位背側では、長母指外転筋と短母指伸筋の筋腹が、長、短橈側手根伸筋腱の上方を横切るように走行し、総指伸筋の深層へと進入する。この部分はインターセクションと呼ばれる。 ②

・長橈側手根伸筋は手関節の背屈と撓屈に作用し、肘関節では屈曲に作用する。 ②

・短橈側手根伸筋も手関節の背屈と撓屈に作用するが、停止が中指の中手骨底となるため、撓屈作用は長橈側手根伸筋に比べ弱い。 ②

・上腕骨外側上顆炎（テニス肘）は、外側上顆に起始する筋腱の付着部炎である。その疼痛の発生には、短橈側手根伸筋が強く関係している。長橈側手根伸筋は外側上顆に付着しないため、疼痛発生の引き金とはならない。 ②

・外側上顆炎に対する保存療法として、短橈側手根伸筋に対する個別的ストレッチングは、症状の改善に有効である。またテニスエルボーバンドは、短橈側手根伸筋の収縮張力を軽減するための装具療法の一つである。 ②

・後骨間神経麻痺（回外筋症候群）の大きな臨床的特徴は、下垂主ではなく下垂指を呈することにある。これは、回外筋内に神経が侵襲する前に、長、短橈側手根伸筋に神経の枝が分布し、その機能が失われないために起こる現象である。 ②

・肘離断性骨軟骨炎に生じる屈曲拘縮の原因として、腕橈関節の関節包に接する長橈側手根伸筋は、治療上重要な組織である。②

・ 関連疾患：上腕骨外側上顆炎（テニス肘）、長橈側手根伸筋腱断裂、短橈側手根伸筋腱断裂、後骨間神経麻痺など。②

・前腕回旋機能障害は、外側上顆炎にも影響を及ぼす。短橈側手根伸筋（ECRB）は肘伸展・前腕回内で伸張するとされる。③　ECRBは上腕骨小頭から橈骨頭の前方を走行し、前腕回内外時に走行が変化し、回内位にて内側、回外位にて外側に偏位する。④　橈骨頭は前腕回内に伴い前外側に偏位するため⑤、ECRBと橈骨頭が接触し⑹、ECRBへの摩擦ストレスが増大する。加えて、ECRBは前腕回外時にはその主動作筋として活動し、前腕回内時には回内屈筋群が活動する。⑦　前腕回内運動時、ECRBは橈骨頭からの摩擦ストレスを受けながら、より伸張され、遠心性に活動するという特徴をもつ。前腕回旋機能障害により、橈骨頭の過剰運動が起こると、ECRBへの摩擦ストレスが生じやすくなる。

・把握動作において、短橈側手根伸筋（ECRB）は肘関節・前腕肢位に関わらず活動し、手関節の安定性に関与する。⑧　手関節の肢位の影響をみた報告により、手関節背屈位ではECRBの活動割合が高まる一方、手関節掌屈位では尺側手根伸筋の活動割合が高まる。⑨　また、外側上顆炎患者では把握動作時のECRBの活動割合が低下すること⑩や症状の長期化により、手関節背屈時、ECRBだけでなく、肘筋の前活動が遅延すること⑧がいわれている。外側上顆炎の理学療法マネジメントにおいては、手関節背屈位での安定化機能が重要となるといえる。⑩

引用文献

①林典雄 監修,鵜飼建志 編著：セラピストのための機能解剖学的ストレッチング 上肢 第１版,2016

②林典雄 執筆：改訂第1版 運動療法のための機能解剖学的触診技術‐上肢,2012

③Takasaki h.et al:muscle strain on the radial wrist extensors during motion-simulating stretching exercises for lateral epicondylitis:a cadacericstudy.j shoulder elbow surg.16(6):854-858.2007.

④bunata re.et al:anatomic factors related to the cause of tennis elbow.j bone joint surg am.89(9):1955-1963.2007.

⑤ranger ta.et al:forearm position’s alteration of radial^head impingement on wirst-extensor tendons.j spoet rehabil.24(1):1-5.2015.

⑥o’Sullivan.et al:upper-lomb surface electro-mypgraphy at maximum supination and pronation torques.the effect of elbow and forearm angle.j electromyogr kinesiol.12(4):275-285.2002.

⑦heales lj.et al:forearm muscles activity is modified bilaterally in unilateral lateral epicondylalgia:a case-control study.scand j med sci sports.26(12)1382-1390.2016.

⑧manickaraj n.et al:muscle activity during rapid wrist extension in people with lateral epicondylalgia.med sci sports exerc.48(4):599-606.2016.

⑨ manickaraj n.et al:lateral eplcondylalgia exhibits adaptive muscle activation strategies based on wrist posture and levels of grip force:a case-control study.j muscukoskelet neuronal nteract.18(3):323-332.2018.

⑩編集 坂田淳：肘関節理学療法マネジメント 機能障害の原因を探るための臨床思考を紐解く，2020