【短期的に治せるモノ、長期的に治せるモノ】

前職場の病院から転職して、デイサービスで働き始めて、

早1年ほど経ちました。

リハビリテーションに従事するにあたって、

病院に比べて、予防的観点で、取り組むことが多くなりました。

呼び名も「患者さん」→「利用者さん」に変わるところなんかも、

何か新鮮でしたね。

デイサービスといっても、リハビリ特化型をうたっているため、PTが4人働いています。

施術、運動療法、物理療法、マシントレーニングなどを通じて利用者の「HOPE」をかなえるコンセプトで運営しています。

 

・ADLでの困難を改善したい人

・現在のADLや生活を維持したい人

はもちろんのこと、

・復職したい人

・孫を抱っこしたい人

・息子の甲子園予選を歩いて見に行きたい人

などなど、HOPEはさまざまです。

 

特に感じたものは、

「意外に元気な高齢者の方々多いなぁ~」

といった印象です。

・その歳で、まだバイク乗ってるの?

・施設まで自転車で来るの?

・最近、先生の家の近くまでドライブしてきたよ!(施設から私の自宅まで約30分)

治療しているこっちが元気もらってしまいます。(本当に)

しかし、元気な高齢な利用者さんを、もっと元気にしたいと思っても、

・長年の関節変形や筋の短縮

・不活動部位の使用による組織の脆弱性(翌日の筋肉痛やストレッチ痛)

・アライメント変化に対応できない組織の脆弱性(インソールなどで即時的に改善するが、翌日には普段荷重していない部分に疼痛が出るなど)

といった加齢による影響が邪魔して、なかなか進まないこともあります。
(私の腕が足りてないだけなんですが…)

予防医学の観点から、病院での治療と大きく異なる点は、

「介入期間の長さ」です。

病院では長くて、3か月程度で患者と治療者の関係は終了することが多いですが、

介護領域では1~2年は平気で介入します。

つまり、「その人の一生を共にする」勢いで、リハビリテーションを通じたマネジメントをしていくものだと感じています。

(まだまだ介護領域でのリハビリテーション経験はペーペーですが…)

長く関係性を築いていくと、

治療内容が一辺倒になりがちになっていることに気が付きました。

でも、

「ただダラダラ同じ治療をしているわけでないよ!」

「ペーペーなりに、考えて治療しているつもりなんだけどなぁ~」

と自分に問いかけてみたところ、

① いつも行ってる治療

② 必要に応じていつもと違う治療

を行っている!

とふと思ったので、そんな自分のモヤモヤを「問診」の流れで、まとめてみたいと思います。




1.患者の悩み

患者の悩みは、

・外傷or障害

・疾患別

・既往歴

・年齢別

・男女別

といろいろな条件下で、

疼痛や機能障害といった形で訴えてくることが多いです。

日々治療をしてると、おおよそ、

① これすぐ治るやつだ!(短期的)

② んー、これは長期戦だな…(長期的)
の2つ大別されることが多いです。

2.悩みの原因の機序(短期的?長期的?)

「短期的」、「長期的」に大別される理由として、

悩み(疼痛、機能障害など)がどのような形で生じたかの「受傷エピソード」が重要だと思います。

私は、ここら辺のことは、すっごい聴きます。

(たぶん少しウザがれるときもあります…笑)

では、何をベースに質問をしているのかというと、

<急性期or慢性期>

まず、組織炎症が生じているかを受傷エピソードから推察します。

次に、単純に、視診、触診で「炎症所見」で診ていいと思います。

(でも結構、損傷が軽度だと炎症所見として現れないこともありますので、その時は比較的疼痛として出現してくるケースが多いように思えます。逃避反射や表情などのチェックが重要です!)

急性期と判断されれば、

・程度にもよりますが、このような状態では「短期的」に分類してます。

・まず受傷部位以外から攻めます。またRISE処置やセルフケアについての指導を実施します。

・受傷部位以外からの影響が、疼痛や機能障害の増悪に寄与している場合は、即時的に改善するケースが多いです。

「え?、痛くない!」「あ、歩ける!」「すごい、魔法みたい」的な反応が、ごくまれにあります。

でもここで、調子に乗ってはいけません!

実際に組織炎症は生じているので、「安静」が第一ですし、必ず経過を追うことを怠ってはいけません。(あくまで一時的に余分な疼痛が軽減しただけ…)

慢性期と判断されれば、

・この状態は「長期的」に分類してます。

・受傷部位ならびに関連組織も含め、統合的に徒手療法、運動療法にて治療します。

・高齢者の場合、この時期は「我慢」の時期です。一気にアライメントを変えたいところですが、慎重に慎重に治療を進めます。それこそ長期的に治療するためには、「毎回同じ治療して

いるじゃん!」と言われてしまいそうなことも、めげずに行い続けます。

(同じことやってても、ちゃんと意図があるんだよ?と自分の頭の中で反芻しながら治療しています。笑)

<外傷or障害>

外傷:転倒や衝突など1回の外力で組織が損傷するような場合

「先生昨日家で転んじゃったのよぉ~」

「椅子に座ろうとしたら尻餅ついちゃって…」

「階段踏み外しちゃって、足首ひねっちゃった…」

(このような訴えは、デイサービスだと結構多いです。)

(転んでも、なんでも、移動できれば皆さん元気なので施設に来ちゃうんですよね!笑)

・ソッコー全身外傷チェック&頻回なバイタルチェックを行います。

・Nsも含め判断し、「病院or安静orこちらが指定した安全で可能な範囲でサービスを受けてもらう」ことになります。

(デイサービスはDrがいませんので、毎回鬼気迫るごとく慎重に丁寧に評価、判断しています!)

・このような状態では「短期的」に分類してます。

・外傷の場合は、あまり積極的な治療はしないですね。先ほども言いましたが、高齢になると、組織が脆弱であるため、治療するとかえって組織損傷を促してしまうことになりかねません。

障害:過剰な運動負荷で長期間に繰り返され組織が損傷するような場合

「台所で調理していると腰が痛くなる」

「田植えをしていると右肩と左腰が痛くなる」

「散歩していると、そのうち左膝のうらが痛くなるのよ」

・この状態は「長期的」に分類してます。(上記の慢性期の状態とほぼ同意義)

・このような問題は、アライメント不良や運動連鎖の破綻が生じていたりすることが多いです。しかし、これらの問題は経過が長いほど、関節変形や負の運動学習は改善しにくいことが多

く、そのため「長期的」に治療していくことを考えてアプローチを行います。

「またあのPT、〇〇筋のストレッチしてる!」

「いいではないか、だってここ伸ばさないと、骨盤の偏位を治せないんだもん!」

的なことを、辛くも人目を気にしつつ、クールぶって治療しています。

<症状の増悪所見、軽減所見>

・これは、各疾患学に則ったり、筋膜や関節運動学に則って、スペシャルテストなどを実施し、症状の増悪or軽減を評価してください。

・これが分かると、この方の、

「生活で気をつけなきゃいけない動作等のポイント」

「回復促進のための適度に動かさなければならない正しい運動方法」

など具体的に指導することができます。

<悩みの程度の経緯(増悪傾向or改善傾向)>

・これは、症状が増悪傾向なのか、改善傾向なのかを聴取するだけです。

・これにより、おおよその「悩み」の改善の予後を伝えることができます。

例えば、

① 症状改善傾向のケース

(患)「2日前、階段で踏み外して、捻挫しました(炎症所見なし)」

(PT)「2日前より痛みは減ってます?」

(患)「減っています(NRS:2/10)」

(PT)「靱帯の緩みもないし、炎症所見もなし!痛みも減ってきている!よし!」

「2~3日無理せず生活していれば、次来た時にはたぶん痛みは無くなっていると思います!」

「では今日は、適度にリハビリをして、家でできるセルフケアをお伝えしますね!」

② 症状増悪傾向のケース

(患)「2日前、階段で踏み外して、捻挫しました(炎症所見なし)」

(PT)「2日前より痛みは減ってます?」

(患)「ほとんど変わらないんですよ…(NRS:9/10)」

(PT)「靱帯の緩みもないし、炎症所見もなし!でも痛みは変わらない、んー…」

「とにかく今日、明日と、痛みが強くならないように生活してください。また明日以降も痛みが変わらないなら、場合によってはかかり付けの病院へ受診してみてください!」

以上のように、症状の経過によって、対応は大きく変わります。

3.まとめ

 

以上のことを踏まえると、

「外傷」で「急性期」である場合:「短期的」に応用に富んだ治療や指導を実施する

「障害」で「慢性期」である場合:「長期的」に毎回同じような治療内容となることが多い

となります。

大小あれど、私たちPTはこのようなことを頭の中でグルグルと考えながら、一回の治療で、「短期的」側面も「長期的」側面も考慮しながら、

その患者に対するオーダーメイドな治療を提供しているのだと、まとめてみて、改めて感じました。

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