最近、スポーツからダイエットまで、
運動・健康増進の分野で、
何かにつけて、
「体幹が重要!」
「コアを意識して!」
などという言葉が良く聞かれます。
今回は、その
「体幹」
について述べていきたいと思います。
【体幹とは】
そもそも体幹とは、
身体の四肢と頭部を除いた重量約48%を占める部位です。
体幹には、中枢神経と臓器が存在し、運動については四肢間の運動連結やバランスに関して重要な役割を果たしています。
【なぜ体幹が重要なの?】
1.運動能力
一般に、体幹安定性を求める理由として、
▶日常生活の基本動作や歩行
▶競技
の運動能力の基礎であると言われ重要視されています。
体幹の機能としては大きく、
①stability(安定性)
②mobility(可動性)
に分類されます。
特に stability(安定性) に関与しては、体幹筋の活動を高めるとされています。
さらに、
①stability(安定性)が保証されると、
③四肢(手足)の素早い正確な動きや運動能力
が発揮できるとも考えられています。
実際、どのスポーツでも有能な選手は、
「体幹が安定している」
「軸がブレないよねぇ~」
と言われることが多いですよね。
2.障害予防
Hodges の研究では、健常人のグループでは、四肢が活動する前に腹横筋が収縮するが、慢性腰痛のあるグループの腹横筋は四肢の運動開始よりも遅れて収縮するという結果が示されています。
このことから腰痛対策として Local muscles へのアプローチの必要性が考えられ始めました。
【体幹にはどんな筋肉があるの?】
体幹の筋肉は複数存在し、
Bergmarkによると、
機能別にGlobal musclesとLocal musclesに分けられ定義されています。
①Global muscles
運動筋と呼ばれ、
▶腹直筋
▶外腹斜筋
▶内腹斜筋
がそれにあたります。
主に脊柱に動きを与える筋肉ですね。
②Local muscles
固定筋と呼ばれ、
▶腹横筋
▶多裂筋
※骨盤底筋群(私はこれも含みます)
がそれにあたります。
これらは、脊柱を安定させるための筋肉になります。
特に、Local muscles に関して、
▶体幹の素早い動きを要求したとき、体幹の動きに先駆けて腹横筋が収縮する(Cresswell)
▶早い上肢や下肢の運動において運動に先駆けて腹横筋が収縮する(Hodges)
との報告もあることから、
体幹の安定や手足の運動には、Local musclesが働くタイミングなども重要視されています。
以上のことから、
いわゆる体幹とは、
アウターマッスルとインナーマッスルで言うところの、
インナーマッスルが該当することがわかります。
ちなみに、
体幹に関与するアウターマッスル(関節を動かす主動作筋)は、
▶腹直筋
▶外腹斜筋
▶内腹斜筋
▶大臀筋
▶広背筋
▶大胸筋
▶僧帽筋
などがあります。
体幹に関与するインナーマッスル(関節を固定・安定させる筋肉)は、
▶腹横筋
▶多裂筋
▶骨盤底筋
▶内腹斜筋(一部)
などがあります。
【体幹の筋肉の働くタイミング】
以上のことから、
①Local muscles(インナーマッスル)で脊柱を安定させて、
②Global muscles(インナーマッスル)で脊柱の動きを作り出します
③その後、Global muscles(インナーマッスル)と協働して、アウターマッスルで手足や全身に動きを与える
というか流れで、体幹筋が働くと考えられます。
つまり、
①Local muscles(インナーマッスル)
▶腹直筋
▶外腹斜筋
▶内腹斜筋
②Global muscles(インナーマッスル)
▶腹横筋
▶多裂筋
③アウターマッスル
▶広背筋、腹直筋、腸腰筋など
の順に働くことが
▶素早く正確な競技動作
▶腰痛予防
などに望ましいと考えています。
【最後に】
「体幹を鍛える」
それはとても重要なことです。
ただなんのために鍛えるのかを念頭に入れ、
どこを鍛えているのかを意識することが、
「本当の体幹を鍛える」
と私は考えております。
皆さまの参考になれば幸いです。
参考文献
宮下 智:効果的な体幹筋トレーニング方法の検討 -異なる運動における腹横筋と内腹斜筋の収縮厚から
Hides JA, Richardson CA, Jull GA:Multifidus Muscle recovery is not automatic after resolution of acute, first-episode low back pain. Spine, 21:2763-2769, 1996.
Bergmark A:stability of the Lumbar Spine. A study in mechanical engineering. Acta Orthopaedica Scandinavica Supplementum 230(60):1-54, 1989.
Cresswell AG, Oddsson L, Yhorstensson A:The influence of sudden perturbations on Trunk muscle activity and intra-abdominal pressure while standing. Exp Brain Res 98:336-341, 1994.
Hodges PW, Richardson CA:Contraction of the abdominal muscle associated with movement of the lower lomb. Physical Therapy 77:132-142,1997.
Hodges PW, Richardson CA:Feedforward contraction of transversus abdominis is not influenced by the direction of arm movement. Exp Brain Res 114:362-370, 1997.
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