多くの一流スポーツ選手に見られる特徴として、
体幹が安定している
軸がブレない
などと聞かれることはありませんか?
実際、体幹の安定は運動学的に重要です。
今回は、体幹の安定の真の目的について述べていきたいと思います。
〈体幹の安定させるとは?〉
体幹を安定させるとは、
「無数に得る脊柱を固定する」
ことにあると思います。
私はこれを、「剛体化」と呼んでいます。
脊柱には、
頚椎7個、胸椎12個、腰椎5個、仙椎5個、尾椎4個、合計33個の椎骨があります。
うち仙椎以外には関節が存在します。
これらの複数の関節を筋肉の収縮で1つの塊のように固定します。
これを「剛体化」した状態としています。
〈剛体化のメリット①:エネルギーロスの軽減〉
脊柱を1本の棒のように安定させるには、
多裂筋、脊柱起立筋、腹横筋、大腰筋、内・外腹斜筋などなど
脊柱に関与するさまざま筋肉が働きます。
これ以外にも沢山あります。
この剛体化が行われている脊柱は、
床半力やさまざまな外力を伝達するのに、
・時間的にも(タイムロス軽減)
・エネルギー効率的にも(パワーロス軽減)
適していると考えています。
右図に比べ左図は、
脊柱が剛体化せず、各セグメントに分かれ、セグメントごとに質量中心を持ってしまうため、
筋が発揮する張力にタイムラグが生じてしまいます。
またこの張力の伝達のタイムラグのせいで、
瞬間的に爆発的なパワーを産生することが出来なくなってしまうのです。
※逆にしなやかに動きたい場合は、
筋肉を部分的にタイミングをずらしながら弛緩し、セグメントを増やします。
私はこれを「弾性化」と呼びます。
〈剛体化のメリットその②:不安定性を軽減〉
物理学的に、
「物体と物体の間にゴムのように縮む力が働いた時、重い物体に対して軽い物体が近づく」
という現象が生じます。
筋肉の収縮は、そのゴムのような働きをするのです。
これを体幹の安定性に置き換えてみると、
左図では、
瞬間的な外力に安定化を図れず、
いわゆるバランスを崩しやすくなります。
つまり、剛体化されている体幹では瞬間的な外力になどに対し安定性が高いと言えます。
〈剛体化のメリットその③:運動の難易度が下がる〉
先ほどの不安定性の軽減作用に加えて、
そもそも、運動の難易度は、
関与する関節の多さにも依存します。
関与する関節が多いほど、
動作の
・タイミング
・空間や動きの軌道
・力の大きさ
のコントロールの難易度が上がります。
よって、剛体化されていない体幹での動作の難易度は高まり、理想の動きが出来ず、ミスや失敗に繋がります。
一方、剛体化された体幹は、関与する関節は、機能的な少なくなります。
(実際は関節は存在するのですが、同尺性収縮にて脊柱が固定されているため)
よって、理想の動きの成功率は高まると考えられます。
〈剛体化するには?〉
では、脊柱の剛体化を行うには何をすればよいでしょうか?
ズバリ!
「パワーポジションの獲得」
です。
脊柱の椎間関節は屈曲位では、
構造学的に、
カップリングモーションが生じたり、
靭帯での制御が緩むため、
いわゆる「緩みの肢位」となり、動きやすくなってしまいます。
※特に猫背の人は、この「緩みの肢位」がゆえに、関節が動かないように、筋肉には力を入れ続けなければならないため、肩こりや腰痛が生じやすいとも言えますね。
逆に、
椎間関節は、脊柱を伸展することにより「締まりの肢位」となります。
そのため、体幹を剛体化するには、脊柱伸展位を作ることがポイントになります。
この脊柱伸展位を自然にとれる姿勢が「パワーポジション」になります。
パワーポジションでも、特に「骨盤前傾」を作る事が脊柱伸展位を作るキッカケになります。
※パワーポジションとは
〈まとめ〉
・体幹の安定性を高めるには脊柱の剛体化を図る
・剛体化すると、運動におけるエネルギーロス(タイムロス、パワーロス)が軽減する
・剛体化すると、不安定生が軽減する
・剛体化すると、運動の難易度が下がる
・脊柱の剛体化にはパワーポジションの獲得が重要
以上のように、体幹安定の真の理由について述べてきました。
ただし、スポーツにおいては、体幹が安定してれば良いわけではありません。
時には、意図的に不安定性を作り出し、窮地を脱しなければならない場面もあります。
(「弾性化」)
必要に応じて、脊柱の剛体化を図り、最高のパフォーマンスを発揮していきましょう!
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