基本情報
起始 | 腸骨外面の前殿筋線と後殿筋線の間① |
停止 | 大転子の外側面① |
支配神経 | 上殿神経① |
髄節レベル | L4~S1① |
作用 | 前方線維:股関節外転・屈曲・内旋 後方線維:股関節外転・伸展・外旋① |
関連情報
・中殿筋は前額面でみるとすべての線維が大腿骨頭の外側に位置するが、矢状面でみると大腿骨頭を前後に覆っている。つまり中殿筋は機能上、前方線維と後方線維に分けられる。 ②
・中殿筋、小殿筋は強力な股関節の外転筋である。 ②
・大腿骨を固定した状態(片脚立位の状態)では、中殿筋、小殿筋は骨盤を外下方へと引きつけ、骨盤を水平位に保つ。 ②
・中殿筋の前方線維は股関節の外転以外に、屈曲と内旋作用を有している。 ②
・中殿筋の後方線維は股関節の外転以外に、伸展と外旋作用を有している。 ②
・各種股関節手術後の安定した歩行の獲得には、長期的かつ計画的な中殿筋機能の改善が不可欠である。 ②
・トレンデレンブルグ徴候とは、中殿筋筋力が低下したケースにみられるもので、片脚起立をさせた際、反対側の骨盤が沈下する現象をいう。 ②
・デュシャンヌ歩行は、立脚時に体幹を患側へ傾けて歩行するもので、中殿筋機能が低下したケースや、股関節への荷重に伴い股関節痛が生じるケースなどにみられる。 ②
・トレンデレンブルグ歩行との違いは、体幹を患側へ傾けることで荷重線を大腿骨頭へと近づけ、股関節にかかる内転モーメントや圧縮力を減少させようとする反応であり、比較的骨盤の水平位は保たれている。 ②
・トレンデレンブルグ歩行の特徴は、歩行速度を速めると股関節を支持する時間が減少するため、左右の動揺性はむしろ減少するのが特徴である。 ②
・大腿切断に対する義足において初期内転角を設定するのは、義足歩行の際に中殿筋を伸展位に保持し、その機能を発揮しやすくするためである。 ②
・変形性股関節症、大腿骨頸部骨折、大腿骨転子部骨折、中殿筋麻痺、先天性股関節脱臼、大腿切断、デュシャンヌ型筋ジストロフィー症など。②
・中殿筋の外転・外旋モーメントアームは股関節の屈曲角度が上昇するに従って減少し、屈曲60°以上で外旋モーメントは消失する③④
・股関節内転位での中殿筋の収縮は寛骨臼外側の接触応力が上昇し外転位では減少する⑤
・変形性股関節症患者を対象に股関節外転筋の筋力強化を単関節運動と他関節運動で行い、その後、片脚立位の筋活動(大殿筋、中殿筋、大腿筋膜張筋)を比較すると、単関節運動群では筋活動量に変化を認めないが、多関節運動群では筋活動量が増大したことが報告されている。⑥ また別の剛体バネモデルを用いた研究では、健常者を対象に、片脚立位姿勢における外転筋の筋張力を推定したところ、中殿筋、大殿筋、小殿筋の筋張力発揮の比率は、それぞれ46%、32%、22%であったと報告されている。⑦ これは片脚立位保持は中殿筋単独の働きではなく外転筋群の筋出力のバランスが重要であること示している。これらの研究報告から、従来のエラスティックバンドを用いた単関節運動中心の筋力強化だけでなく、動作パフォーマンスを再獲得するには不十分であるといえる。⑧
・健常者に比べ変形性股関節症例において、中殿筋のTypeⅡ線維の割合が低下していることが報告されおり⑨、筋線維タイプの組成比率に差があることも示されている。このように筋の持久能や瞬発能にも変化が生じると考えられる。⑧
・KumagaiらはMRIを使用して健常者を対象に片脚立位5分後の小殿筋、中殿筋の輝度変化を調べた結果、中殿筋よりも小殿筋の輝度が高くなったと報告している。⑩ さらに、ワイヤ電極を用いて健常者を対象に片脚立位時の股関節外転の筋活動を計測した結果、小殿筋が中殿筋や大腿筋膜張筋活動に比べ優位に高くなる結果を示した。⑪ これらのことより、股関節外転筋機能不全に対しては、小殿筋の働きも重要である。⑧
引用文献
①林典雄 監修,鵜飼建志 編著:セラピストのための機能解剖学的ストレッチング 下肢・体幹 第1版,2019
②林典雄 執筆:改訂第1版 運動療法のための機能解剖学的触診技術‐下肢・体幹,2007
③dostal wf,Soderberg gl,Andrews jg:actions of hio muscles.phys ther.1986;66:351-61.
④delp sl,hess we,Hungerford ds,joses lc:variation of rotation moment arms with hip flexion.j biomech.1999;32:492-501.
⑤金井章:筋骨格コンピュータモデルを用いた運動時の股関節ストレスの検討.理学療法学.33⑷2006
⑥今田健.ほか:変形性股関節症における単関節.多関節運動重視したエクササイズが関節可動域 筋力 片脚立位及び歩行に与える影響.理学療法学.23⑷521-527.2008
⑦姫野信吉:剛体バネモデルによる股関節骨頭合力の推定について.関節の外科.18.1-6.1991
⑧編集 永井聡 対馬栄輝:股関節理学療法マネジメント 機能障害の原因を探るための臨床思考を紐解く,2021
⑨slrca a.et al:sselective type fibre muscular atrophy in patients with osteoarthritis of the hip.j neurol sci.44(2-3):149-159.1980
⑩kumagai m.at al:functional evauation of hip abductor muscles with use of magnetiv resonance imaging.j orthop res.15⑹:888-893.1997
⑪室伏祐介.ほか:ワイヤ電極による股関節外転筋の比較 外転20° 片脚立位 歩行において.Hip Joint.39(supple)235-237.2013
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